妊娠前に接種が推奨されるワクチン
妊娠前に
接種が推奨されるワクチン
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妊娠中は特定の感染症により、妊婦さん自身の感染重症化や、流産・早産のリスク上昇、また先天奇形など赤ちゃんにも影響が出ることがありますが、妊娠前のワクチン接種により感染予防を行うことができるものがあります。
これらは総じてVPD(Vaccine Preventable Disease)と呼ばれており、その中でも妊娠前に接種が推奨されるワクチンには、麻疹・流行性耳下腺炎・風疹・水痘(MMRV=measles(麻疹)/mumps(流行性耳下腺炎)/rubella(風疹)/varicella(水痘))ワクチンなどが含まれます。MMRVワクチンは生ワクチンであり、妊婦さんに生ワクチンを接種することはできませんので、妊娠前に接種を行っておくことがすすめられています。
自身や赤ちゃんを守るために、ワクチンで予防可能な感染症について事前に知っておき、感染症による影響を理解しつつ計画的にワクチン接種を検討することは大事なことです。
●麻疹(はしか)
麻疹に対して免疫をもたない大人の感染では妊娠の有無にかかわらず、入院治療を要することが多いです。先進国でも、麻疹患者の約1000人に1人は死亡する可能性があります。体内に入った麻疹ウイルスは免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖して、一時的に強く免疫をおさえます。麻疹ウイルスそのものによる影響以外に、免疫がおさえられている時期に他のウイルスや細菌感染症にかかって重症になるおそれもあります。
妊婦さんが麻疹にかかると、妊娠していない方に比べて重症化しやすく、流産・早産のリスクが上がったり(約30%)、胎児死亡、新生児麻疹を起こしたりすることもあります。なお、先天奇形の原因にはならないとされていますが、赤ちゃんの発育が悪くなることがあります。
●流行性耳下腺炎(ムンプス/おたふく風邪)
流行性耳下腺炎のワクチンは現段階で任意接種であるため、未接種の大人は少なくないと考えられます。年齢が高くなるほど、流行性耳下腺炎に感染したときに症状が出やすく、思春期以降の感染では男性の約20-30%に睾丸炎、女性の約7%に卵巣炎を合併するという報告もあり、生殖能力への影響が出る可能性があります。また永続的な難聴の原因になることもあります。
妊娠の初期に感染すると、流産の原因になることもあります。
●風疹(三日はしか)
風疹に感染した場合、症状が現れず、あるいは軽く気づかないこともありますが、大人で発症すると高熱や発疹が長く続いたり、重篤な合併症を併発したりすることもあります。症状の幅が広く、臨床症状のみで風疹と判断するのが困難であることから、気づかずに感染してしまうこともあります。
風疹に対する免疫が不十分な妊婦さんが妊娠20週までに感染すると、赤ちゃんに心臓の病気、難聴、白内障、網膜症、血小板減少性紫斑病などが発症し、生まれつき身体が小さいなど、いわゆる先天性風疹症候群を呈することもあります。特に妊娠のごく初期に罹患すると高率に先天性風疹症候群を発症することから、妊娠前からの予防が重要になってきます。
2012年~2013年にかけて大規模な風疹流行があった際に、2年間で1,6000人を超える感染者が報告され、そのうち約90%が成人でした。この流行の影響で45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されています。男性は風疹のワクチンを接種しなかった年代が長かったことから、この流行時には男性が女性の約3倍多く風疹にかかりました。先天性風疹症候群の発症を減らすためには、男女ともにワクチンを接種し風疹の流行を抑制し、女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前につけておくことが重要です。
●水痘(水ぼうそう)
大人になって初めて水痘感染を起こすと重症になりやすく、特に妊婦さんがかかると未治療での死亡率は13~14%になるとされています。
流産・早産のリスクもあがり、さらに赤ちゃんの発育が悪くなったり、小頭症・小眼球症や白内障などの目の病気や手足の形成が不良となるなどの発育異常(先天性水痘症候群)を伴うこともあります。
  • ※ 免疫抑制剤を使用している方は生ワクチンが接種できない可能性がありますので、主治医にお問合せ下さい。なお、同居家族にワクチンをうつことで一定以上の感染予防効果が得られます。
  • ※ それぞれの感染経路やワクチンは以下の表にまとめてあります。
感染症名 感染経路 ワクチン ワクチンの種類 妊娠中の治療法
麻疹(はしか) 空気感染 麻疹ワクチン(麻疹風疹混合ワクチン) 生ワクチン 対症療法のみ
流行性耳下腺炎(ムンプス/おたふく風邪) 飛沫/接触感染 ムンプスワクチン 生ワクチン 対症療法のみ
風疹(三日はしか) 飛沫/接触感染 風疹ワクチン(麻疹風疹混合ワクチン) 生ワクチン 対症療法のみ
水痘(水ぼうそう) 飛沫/接触感染
※伝染力は麻疹より弱く流行性耳下腺炎や風疹より強い。家庭内接触の9割が感染。
水痘ワクチン 生ワクチン 外用薬
抗ウイルス薬の投与
※母体の症状改善が目的で、先天性水痘症候群を治療するものではありません。

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